ソニーのMDウォークマン MZ-R3② です。今回は「本体を触ると一瞬電源が落ちる」という症状の個体で、バックアップ電池の交換も含め、内部の状態を丁寧に確認しながら、原因を追い詰めていく修理記録です。
Contents
- 今回の症状と依頼内容
- 外観チェックと初期動作確認
- バックアップ電池 ML1220 の交換作業
- タブなし電池へのスポット溶接対応
- 接触不良の原因追及:フラットケーブルのコネクタ剥離
- 極小ピッチコネクタの再ハンダ作業
- 組み直しと動作確認:症状は解消!
- 30年選手のMZ-R3に起きがちなトラブルについて
- まとめ:初期録音モデルとしての価値と今後の扱い
- 再修理となりました(2026/09/30追記)
1. 今回の症状と依頼内容
以前に修理を行ったことがある、ソニーのMDウォークマン MZ-R3ですが、今回は「本体を触ったり動かすと一瞬電源が落ち、再生時でも電源投入時の状態に戻ってしまう」という症状の、別の個体をお預かりしました。あわせて、メモリー保持用のバックアップ電池の交換も!ということで、交換用電池も一緒にお送りいただいています。
2. 外観チェックと初期動作確認
まずは外観の確認から。これがまた非常に綺麗な状態で、オーナーさんが大切に使われてきたことがよく分かります。電池フタ近くに多少の液漏れ跡はあるものの、内部の電池BOX自体に腐食などはなく良好。

裏面。僅かに電池液漏れの跡はあるけど、キズは少なく奇麗な状態ですね!
単三電池2本を入れて動作確認すると、確かに再生はできるのですが、MDカセットのフタ周辺を触ったり、本体を軽く動かすと瞬間的に電源が落ちてしまいます。すると再生が止まって電源を入れたばかりの初期の状態に戻ってしまう。折角外に持ち運べるように小型軽量でデザインされているMDウォークマンシリーズなのに、これでは携帯性が全くなく勿体ない状況です。
3. バックアップ電池 ML1220 の交換作業
ということで早速分解し、断線部分の同定と電池交換を実施していきます。

ネジを外し裏蓋を取り外した状態です
内部もかなり綺麗で電池の液漏れによる腐食などは一切ないですね。黒い電池BOXを取り外すとバックアップ電池のML1220が顔を出します。では最初に電池交換からということで、電池が搭載されている電池キバンを取り外します。

ML1220、充電式のリチウムイオン電池です
このML1220は定格3Vのリチウムイオン電池なので、使用時に自動で充電されていく筈なのですが、実際に電圧を計ってみると、何と 0.19V しかない状態です。3Vのリチウムイオン電池の場合、2.5Vを下回ると通常の充放電サイクルの範囲を逸脱し、急速に電池性能が劣化するんですよね。なのでこの電池は相当劣化している状態、ということになります。

電池は消耗しきっていますね
4. タブなし電池へのスポット溶接対応
元の電池はタブ付きで電池キバンにハンダ付けされていましたが、今回支給いただいた電池はタブなしのボタン電池。

左:取り外した電池
右:新品
このまま電池にリード線をハンダ付けしてしまうと、リチウムイオン電池を300℃以上の高温にわざと晒すことになり、相当な劣化を招きます。 そこで、古い電池からタブを剥がし取り、新しい電池にスポット溶接することにしました。ということで、以前Amazonで買った “ちょっと残念だけど性能は十分” なスポット溶接機がここで活躍します(何が残念なのか気になる方は、こちらをご覧ください)。

タブのスポット溶接です!
タブ自体は古い電池からラジオペンチなどで ”巻き取る” 様に剥がせば、簡単に外れます。これを新しい電池に溶接するのですが、タブが結構小さいし、少し変形してしまっているので、電池の電極同士をショートさせない様に注意しながら溶接していきます。こちらが溶接後です。

スポット溶接後。タブが曲がっていて、見た目が悪いっすね
少々見た目はアレですが動作に問題はありません。早速元の電池キバンにハンダ付して戻しておきます。

電池交換後です

パナソニック コイン充電池 ML1220 縦型端子付き
5. 接触不良の原因追及:フラットケーブルのコネクタ剥離
次は本題の接触不良部位の追及です。MZ-R3は複数のフラットケーブルで基板同士を接続しているのですが、どうやら経年劣化でコネクタが剥離してしまう個体が多いようで、先人の方々が修理にトライされた記事が幾つかWeb上にありますね。 なので今回もコネクタ部を重点的に目視確認していきます。ただ、このフラットケーブル、コネクタ側に抜け止めのロック機構が付いてそう簡単に外れない様になっているんですよね。でも外さないとハンダ面の確認が出来ないということで、何気なく先ほど電池交換のために外した電池キバンの奥側にある、操作パネルキバンをいじっていると、あれ?コネクタがケーブルごと取れてしまった・・・。

コネクタがポロっと外れてしまいましたよ。ちなみに黒い部分がロック機構です
6. 極小ピッチコネクタの再ハンダ作業
でもこのコネクタ、小型だけど6ピンでちゃんと本体を支えるためのハンダランドも左右にあるので、そう簡単には取れてしまうものではない筈だけど。。。ならばきっとこのコネクタが瞬停の原因なのでは?ということで、コネクタのハンダ付けを試みます。でもこのコネクタ、端子間のピッチが0.75mmほどしかなく、手作業でのハンダ付けは相当難しいんですよねぇ。でも20ピンの端子でもないし、やってやれないことはない!、ということで拡大鏡を使いながらなんとか再ハンダを完了しました。

修復後。ハンダ付け、出来ました!
7. 組み直しと動作確認:症状は解消!
最難関の再ハンダが完了したので、すべて組み直して動作確認すると、多少振動を与えてもフタを触っても再生が途切れません。安定して動作しています。 やはり今回は想定通り、コネクタ部のハンダ剥離が原因でした。

修理完了後。動作良好です!
8. 30年選手のMZ-R3に起きがちなトラブルについて
MZ-R3は1995年発売なので、すでに製造から30年以上が経過しています。この機種、音楽のタイトル入力用に、ソニーお得意で一世を風靡した “ジョグダイヤル” が搭載されていて便利だった反面、操作部には ”押す力” と ”ねじる力” が繰り返し加わるため、ハンダが金属疲労で割れてしまったのでしょうね。今回の症状もまさにそんな感じでした。

これが ”ジョグダイヤル” です
9. まとめ:初期録音モデルとしての価値と今後の扱い
MZ-R3は録音機能を備えた初期のMDウォークマンですが、今となっては貴重な存在です。類似機種も含めてお持ちになっている皆様、どうぞ大切になさってください!
10.再修理となりました(2026/09/30追記)
先日修理を行った、こちらのポータブルMDプレーヤー、MZ-R3が修理へと再びに戻ってきてしまいました。症状は、修理後しばらくは問題なく動いていたものの、再度途中で電源が切れる様になってしまったとのこと。前回とほぼ同一症状ですね。
早速動作確認をしてみます。確かに動作が不安定で、再生が途中で止まったり、操作ボタン(再生、停止、次の曲へ、前の曲へ、ポーズなど)が押せなくなる時があったりしますね。ここは前回修理した部分でもあるので、さてはまたフラットケーブルのコネクタが何らかの拍子に外れたのでは?と当たりをつけてみます。

動作はしますが不安定な状態です
早速分解です。内部を確認すると、コネクタ自体はしっかりキバンにくっついた状態で、特に問題はなさそう。ではどこからこの接触不良の様な症状が出ているのか?と探ってみますが、なかなか原因がつかめません。

コネクタは問題なさそうなのですが・・・
作業としては、耐久性のないフラットケーブルを何度も抜き差ししながらの確認になるのですが、あれれ?気が付くとフラットケーブルの形状が変わっている?のに気が付きました。そうなんです、何度も抜き差ししていたので、折り目がついている部分から先端が破断して取れてしまった様です。

何と先端が取れてしまった・・・
あちゃー、やってしもた。このフラットケーブル片側が6P、反対側が回転スイッチからの信号も加わるので8Pというかなり特殊なもの、こんなケーブル汎用品として売っていないし、どうしたものかと色々考えました・・・
幸いなことに、このフラットケーブル、長さに少し余裕があるゆえ、きつく折りたたまれていたんですよ。なのでその先端がなくなってしまっても、長さ的にはコネクタに届く!であれば、切れてしまった部分の被覆を削り、新たに“端子(接触分)”を作り出せば良いんですよ。作業には、カッターの刃を水平に使って、少しずつ被覆を削っていく感じで中の銅線を露出していきます。コツとしては、ケーブル全体に均等に力をかけて少しづつ焦らずに削っていく感じですね。

カッターで先端5mmほどの被覆を削ります(写真は作業途中)
ということで、削り出し作業が終わりました。長さは先端約5mmぐらいでしょうか。テスターでちゃんと導通があることを確認してから、密着させるために厚みを増すシートを切れてしまったフラットケーブルから移植します。

厚みシートを移植。でもよく見ると、ケーブルの方が太いですよね。
そうです、上下のフチの不要部分は切り落とす必要がありました
ドキドキしながら再度組み直しを行い、ちゃんと動作する様になったことを確認しました!

再組み立て後。フラットケーブルが如何に平らに組み立てられているかが分かりますね
恐らくなのですが、このフラットケーブル、相当折れには弱いみたいですね。元々MDウォークマンという小さな筐体の中に収めるために、かなりきつく折りたたまれていた様です。それを前回修理のために取付/取外しを行ったので、金属疲労が進んでいたのでしょう。
持ち主さんに返却後、使用に伴いその状態が悪化、そして今回の修理時についに金属疲労で限界に達して破断してしまった様です。メーカー修理の場合は、大抵こういったフラットケーブルは修理の際に交換するものなので、特に問題はないのですが、純正の新品パーツがない状態で修理する場合は、”修理プランB” を持っていた方が良いですね、特にソニー製品は。
ということで、前回返却したときよりも長めに動作確認を行い、他の問題がないことを確認してから、持ち主の方に返却したいと思います。
※この修理記録はあくまで個人の備忘録です。分解や修理はリスクもあるので、本内容を参考にされる場合は、あくまでも自己責任でお願いします。


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