Jackeryのポータブル電源は信頼性が高い一方、特定年代のモデルでは「3端子レギュレータの熱容量不足」によるロジック系の電源断がよくあるみたいですね。今回お預かりしたJackery 700もまさにその症状で、しかも“過去に修理済なのに再故障”というなかなか手強い個体。内部の状態確認から電池セルの健全性チェック、そしてレギュレータの再配置と放熱設計まで、Yo工房流の修理プロセスをまとめました。
Contents
- 現物チェック:見た目は綺麗なのに電源が入らない
- 分解とセル電圧の確認:6直列セルの状態は良好
- ロジック電源の不具合:レギュレータの取り付け位置と放熱問題
- 放熱設計のやり直し:最適な取り付けポイントを発見
- 動作復活:液晶点灯と充電テスト
- 100%にならない充電率:BMSの学習とセル劣化の可能性
- 実容量チェック:7年経過でも81%を維持
- 修理完了と今後のメンテナンスアドバイス
1. 現物チェック:見た目は綺麗なのに電源が入らない
今回の修理品はJackery 700。外観はそこそこ綺麗で、キズも少なく酷使された感じはゼロ。でも充電用のACアダプターを挿しても液晶は沈黙したまま、またボタンの操作にも一切反応はなし。でも充電ランプだけは青く光るという、典型的な「ロジック部に電源が来ていない」症状です。 この年代のJackeryは3端子レギュレータの熱容量不足が有名なので、まずはその線を疑います。

青ランプだけは光るのですが、沈黙です
2. 分解とセル電圧の確認:6直列セルの状態は良好
ということで早速分解してみます。分解は左右のオレンジ色のカバー(6角ネジ4 x 2本)と、背面のネジ6個、更には下面のゴム足に隠れている2本を外せば、後側のカバーが外れます。内部は電池まわりはしっかり養生されていて、落下対策もバッチリされていますね。
ネジの本数が多いので、私はVESSELの電動ドライバーを常に使っています。未だ電動ドリルは持っていても電動ドラは持っていない方が多いと思うので、これは絶対におススメしたい!です。ホントに楽!私なんかはモノいじりをしすぎて、常に軽い腱鞘炎っぽくなっているんだけど、これのおかげでYo工房が継続できていると言っても過言ではないです。

ベッセル(VESSEL) 電動 ボールグリップ 電ドラボールⅡ ドライバー ビット5本付 USBタイプCで充電 最大出力トルク3N・m 220USBC-5

セル部分はしっかり養生されています
では最初に電池部を外して各セル電圧をチェック。 このポタ電は3.7Vのリチウムイオン電池 x 6直列なので出力端子に20V前後の電圧が出ていればOKですが、個別セルのバラつきも重要。 測定結果はどれも2.8V台で差は0.05V以内。セル自体は健全そのもの。 また合計電圧が17.05Vとかなり低めなので、BMS(バッテリー監視回路)も動いておらず。なので補助充電を掛けて軽く電圧を回復させておきます。

セル1測定中
| No. | 電圧(V) | コメント |
|---|---|---|
| セル1 | 2.839 | |
| セル2 | 2.851 | |
| セル3 | 2.868 | 最高電圧 |
| セル4 | 2.818 | 最低電圧(差は0.05V) |
| セル5 | 2.852 | |
| セル6 | 2.823 | |
| 合計 | 17.051 | 18V以上ならOK |

補助充電中です。2.65Aぐらいでゆっくりと
3. ロジック電源の不具合:レギュレータの取り付け位置と放熱問題
問題のレギュレータを確認すると、純正のチップ型ではなく大型のL7805CVが “空中配線” で取り付けられていました。

電源は空中配線で供給されています

素子も浮いていて “色々と” と心配な状態・・・
TO-220パッケージならスペック上は1.5A(チップ型の数倍以上)まで電流が取れるんだけど、それはしっかりとした放熱板があっての話。更に今回は24V→5V(電位差19V!)の降圧なので発熱がかなりエグいんですよ。計算してみると分かるけど、TO-220パッケージであっても単独で使う限り、放熱版があるオリジナルのチップ型3端子レギュレータと流せる電流は変わらないんです。
計算がかなりややこしいので、周囲温度を25℃として ”単体で使用する” とこんな感じ。
| 入力電圧 (V) | 5Vとの電位差 (V) | 許容電流の目安 (A) |
|---|---|---|
| 7V | 2V | 約 1000mA |
| 9V | 4V | 約 500mA |
| 12V | 7V | 約 285mA |
| 15V | 10V | 約 200mA |
| 20V | 15V | 約 133mA |
| 24V | 19V | 約 105mA |
なので素子的には全く条件が良くなっておらず、熱ストレスに晒された結果、再度素子が飛んでしまったのでしょうね。
ちなみに純正の取り付け位置は焦げていて、隣のダイオードは交換済み。かなりの熱が出ていた形跡がありますね。

U11の部分にチップ型の3端子レギュレータがあったと思われる。ダイオード左のチップコンデンサは少しだけ茶色に変色(機能には問題なし)
4. 放熱設計のやり直し:最適な取り付けポイントを発見
「熱を逃がせる場所」探しって、結構難しいんですよね。少なくとも以下の条件を満たさないと、再々故してしまう未来が想像できてしまいます。
・基板固定用の穴あり (素子をしっかり共締めで固定したい)
・平面で広いGNDパターンあり(熱伝導に優れた銅箔がある)
・追加工不要で取り付け可
ということで内部を観察していたら、なんと制御基板の右下に理想的なポイントを発見。これはラッキーと、ここにTO-220パッケージの7805Aレギュレータを移設し、シリコングリスを塗って熱伝導を確保。 24Vラインも空中配線を避けて極力短くし、シリコン接着剤で固定。 これで熱問題はほぼ解決です。

サンハヤト 熱伝導性改善用シリコン放熱用シリコーン SCH20

全景です。今回の引き回しですっきりしました

3端子なのでちゃんと出力端子(緑)にコンデンサも追加(入力側(赤)は純正のものを活かせたので省略)
5. 動作復活:液晶点灯と充電テスト
仮組みして動作チェックすると、液晶が見事に復活。 ボタン反応も正常で、ロジック部への電源供給が戻ったことが確認できました。

充電表示もちゃんと出て、充電が出来ていますね!復活です!!!
大丈夫そうなので、そのままフル組みして100%まで充電です。
6. 100%にならない充電率:BMSの学習とセル劣化の可能性
翌日確認してみると、あれ?充電は完了しているのに表示は90%で止まっている。 何故か過充電表示が出ていて、BMSが安全のため充電を止めている状態に遭遇。

90%の下に、カミナリ付きの電池マークが出ています。過充電のサインです
メーカーのFAQを確認してみると「全放電→フル充電を数回繰り返す」ことでBMSが電池の実容量を学習するっぽいんだけど、残念ながら2回では変化なしでした。 となると次に気になるのはセルの経年劣化。 基板には2019年ロットの表示もあり、今回故障してからの放置期間も不明なので劣化の可能性は十分あり得ますね。

キバンの製造は2019/4/12に行われたっぽいです
7. 実容量チェック:7年経過でも81%を維持
ということで、Ecoflow Delta3 Air 1000の時と同じく、10Ωのメタルクラッド抵抗で実容量を測定してみました。

測定開始直後

測定終了直前。あと1%
フル充電(90%)から約16Wでどれだけ動くかを計測したところ…
何とっ、35時間13分稼働 → 570.1Wh 公称704.6Whの 約81% を維持していました。 一般的にポータブル電源は、内部ロスで新品でも90%程度の容量しか使えないので、7年経過で81%はかなり優秀。 さすがはJackeryですね。

8. 修理完了と今後のメンテナンスアドバイス
まだ電池の容量は充分に残っているし、実使用的には問題なさそうなので、今回の修理はここで完了としました。 故障の原因は、3端子レギュレータが最初に発熱により破損して充電できなくなり、時間と共にセルの電圧が低下したものと考えます。
オーナーさんには「数ヶ月に1度は50〜80%まで充電してあげるとセルが長持ちしますよ」とお伝えしておきます。また今後使っていくうちにBMSが実容量を学習して100%表示に復活してくれると気分的にも良いですね。
※この修理記録はあくまで個人の備忘録です。分解や修理はリスクもあるので、本内容を参考にされる場合は、あくまでも自己責任でお願いします。


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