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昭和の名機パイオニアのレコードプレーヤー PL-505、ドミノ故障と向き合った修理記録

修理

秋の夜長にアナログレコードを楽しむって、充実した時間を過ごせそうですよね。でもそのためには、プレーヤーがしっかり動いてくれないと始まりませんね。今回は、1983年製のパイオニア PL-505を “整備済み” として購入したものの、実際には動作不良部分が残っていた個体を、Yo工房が本気で立て直した修理記録です。腐食・接触不良・コンデンサ抜け・ロジック異常と、昭和家電らしいドミノ故障のオンパレードでしたが、最終的には安定動作まで持っていくことができました。

Contents

  1. 秋の夜長とアナログ音楽の楽しみ
  2. “整備済み”PL-505の実際の状態
  3. 電源系のチェックと分解
  4. 制御キバンの腐食とハンダ総リフロー
  5. 動作不安定の原因追及(接触不良編)
  6. 電解コンデンサの交換と若返り
  7. タクトスイッチ交換と操作系の修復
  8. サイズ変更スイッチのロジック異常
  9. 回転数スイッチとの並列化という最終解
  10. 外観金属部の磨きと仕上げ
  11. 各部調整
  12. 昭和家電の“ドミノ故障”と修理の醍醐味
  13. まとめ:PL-505は再び秋の夜長の相棒へ

1. 秋の夜長とアナログ音楽の楽しみ

涼しくなってきた秋は、レコードでゆっくり音楽を聴くのに最高の季節ですよね。アナログの情報量の多い音と、プレーヤーが動く様子を眺める時間は、ちょっとした贅沢です。最高の時間すぎて、ついついお酒が進んじゃいますね。

2. “整備済み”PL-505の実際の状態

今回のPL-505は、依頼者さんがとあるサイトで “整備済み” として購入したものだそうです。実際に手元に届き動作を確認したところ、電源が入って動作をしかけたのにも関わらず、試運転中に動作が止まってしまったとのこと。新品カートリッジの装着とオートプレイ部分だけは整備されていて良好だったみたいですが、全体的にはまだまだ整備が必要な状態でした。

カートリッジはオーディオテクニカのAT-VM95Cに交換されていました。使い勝手の良いタイプですね

オーディオテクニカ AT-VM95C VM型 ステレオカートリッジ 丸針 AT-VM95シリーズ レコード針 カートリッジ レコードプレーヤー

3. 電源系のチェックと分解

ということで、早速動作を確認してみます。電源を入れると、33回転のLEDランプだけは点灯するものの、一切動作しない状況ですね。駆動系もロジック系も全く動いていない感じです。となると、最初に疑うのは、そう、電源系です。

33回転ランプのみ点灯

ということで早速分解していきます。ゴム足4個を外し、裏蓋を取り外すと内部が見えてきます。

内部の様子。中央が制御キバン。下側に操作キバン(左右2枚)が見える

この機種はコンセントからの1次系をトランスで低電圧に落としているので、2次側には100Vよりも低い交流電圧が出ている筈です。テスターでオレンジ色及び赤色の端子を測定してみると、それぞれ15V、33Vはちゃんと出ています。ということは、トランス自体は無事ですね。次に交流を直流に変える整流回路及びロジックICが搭載されている、制御キバンを見ていきます。

電源トランスからの出力はしっかり出ていますね。正常です

(余談ですが、トランス式の機器は、一般的に低ノイズ性でスイッチング電源を凌ぎます。微細な信号を扱うアナログプレーヤーにはぴったりの電源ですね!)

4. 制御キバンの腐食とハンダ総リフロー

制御キバン自体は一見、目立った損傷や電解コンデンサの液漏れなどはなさそうなのですが、裏っ返してみてびっくり、かなり広範囲に腐食の痕跡があります。このキバンはプレーヤー使用時にパターン面が上側を向くので、恐らく何かしらの液体が内部に侵入して腐食したものと推測します。

液体がこぼれて腐食した跡があります

拡大してみるとハンダ自体も劣化しているのが分かります

ということで、最初はキバンの洗浄です。いつもの様に水拭きと無水エタノールを使ってパターン面を綺麗にしていきます。でもこの腐食によって、ハンダ自体もそれなりに劣化しているので、これは全ハンダ付けのやり直しが必要ですね。

綺麗に清掃+再ハンダ完了です

健栄製薬 無水エタノールIP 400ml(掃除)

5. 動作不安定の原因追及(接触不良編)

ここまでの修復で電源が供給されるようになったので、ようやく動作確認が出来る様になりました。一応各機能は動作しているのですが、安定していません。細かい操作が出来ない場合があるのと、何らかの拍子にまた33回転ランプ点灯だけで操作できなくなってしまう状況に戻ってしまうんです。でも制御キバンを触ったり、少し曲げたりした場合に挙動が変わるので、これは間違いなく接触不良ですね。

指でケーブルにテンションを掛けると、挙動が変化します

5Vが出たり、出なかったり

実は先ほどハンダ付の際に15Vから5V系を作り出している、3端子レギュレータの上流側のパターンが意図的に切られているのを見つけていました。恐らく液体による故障部位の切り分けのためにカットしたのだと思いますが、修復はされているものの、結構適当な感じだったんですよね。絶対的にハンダ付けの面積が足りず、接触不良の原因になりそう。ということで、この部分はパターンをもっと露出して、ハンダでパターン同士を確実につなぎました。

5Vのパターン切断部。左から、修復前、銅パターンの露出(中)、再ハンダで修復(右)

6. 電解コンデンサの交換と若返り

これで、多少キバンを押したり曲げたりしても電源は落ちなくなりました。でもまだ挙動が変ですね。ということで、引き続き確認を続けていきます。このプレーヤー製造が1985年ということで、既に40年経過していることもあり、次に疑うのは電解コンデンサの液漏れです。制御キバンには全部で8個の電解コンが搭載されていますが、良く液漏れが起こるのは、電源に近い平滑用の容量の大きいコンデンサなんですよね。

ということで、電源側に近い4個の電解コンデンサを交換しました。1個は結構液漏れしていて、キバンにまで電解液がこびりついていました。キバンは徹底的に清掃しときます。折角なので、ニチコンの音響用電解コンデンサ、MUSE Goldに置き換えます。これでこの先10年は大丈夫でしょう。

液漏れしていた電解コンデンサ。容量も抜けていて、単なる抵抗になっている。

7. タクトスイッチ交換と操作系の修復

前面の5つのスイッチの反応が悪く、チャタリングを起こしていました。タクトスイッチの接触不良ですね。このタクトスイッチ、大型タイプだったので手持ちのタクトスイッチはそのままでは合わないんですよ。上部に化粧パネルを取り付けられるように凸形状になっているので、頭をカットして高さを揃えました。

操作キバン裏側。こちらも水分侵入による腐食がありますね。なのでタクトスイッチは全交換です

交換したタクトスイッチ

左上:オリジナル
右上:新品も高さが合わない
右下:頭をカットして高さ調整

8. サイズ変更スイッチのロジック異常

タクトスイッチ交換で、動作もスムーズになったかと思いきや、今度はレコードサイズの変更スイッチが効かない時があることが分かりました。何故か25cmサイズのままで固定されてしまっていて、これでは一般的なLPレコード(30cm)を聴く際にとても不便ですね。

タクトスイッチからロジックICまでの経路の接触不良を疑い、テスターで追っていくと、抵抗値が安定せずあまり宜しくない状態です。キバン上では信号は安定しているので、恐らく配線が接続されているコネクターがあやしい(圧着部の腐食か?)と睨み、コネクター部をカットして、制御キバンに配線を直でハンダ付していきます。結果は殆ど改善せずでがっかり。

コネクターをカットし、直接配線をハンダ付け

ならばと制御IC付近にある電解コンデンサの容量抜けか?とも思い、結局制御キバン上は全コンデンサを交換してしまいました。それでも動作は安定せずです。

これは困った、、、どうしようかと考えた結果、ターンテーブルキバンからのフィードバックが帰ってこないのでは?ということで、ダイレクトドライブ機構を駆動するターンテーブルキバン上の電解コンデンサも全交換してみました。それでも状況は改善せすで、またまたがっかり。でもまあ、40年も前の製品なので、今後安定して使って貰うためにも、電解コンデンサは全交換しておくのも作戦としてはありなので、部品の若返りが進んだので結果オーライかと思います。

ダイレクトドライブキバン。こちらも電解コン、全交換しました

9. 回転数スイッチとの並列化という最終解

更に原因を追究すべくロジックICと操作部をワニ口クリップで繋いだりしながら、原因追及をしていきます。

ロジック回路追跡中

すると、サイズ変更のスイッチの入力は、ロジックICの23番ピンにしっかり入力されているのに、全く入力を受付けていないことが分かってきました。恐らく5V電源ラインの接触不良で、何度も電源断からのonが繰り返されているうちに、中のロジックが部分的に突入電流で壊れてしまったのかも?と考えます。

黄矢印がサイズ変更を受け付ける筈の23番ピン

幸いなことに、回転数変更の信号線と混合してやると何故かサイズ変更も効くということが分かってきました。またこのスイッチはどちらも単に信号をGNDに落としているだけなので、回転数+サイズ変更の信号を一緒にしてしまっても、ほぼ悪影響はないだろうという考えから、操作スイッチの裏側にジャンパ線を飛ばして、両方のスイッチを並列接続することにしました。

一部ジャンパ線を飛ばし(GND強化)、かつスイッチを並列接続しています

これで回転数スイッチ(2段階)を押しても、サイズ変更スイッチ(3段階)を押しても同じで、どちらも順番に変わっていくのですが、段階数が違うので、トグル式に押していくと最大でも 2 x 3 = 6通りの組み合わせとなるので、最大6回で元の設定に戻ることが出来ます。若干手間ですが、電源を入れた際のデフォルト設定が、33回転と30cmになるので、これでOKとしました(最も多く使う設定なので)。

ということで、若干オリジナルとは異なる仕様にはなってしまいましたが、これで修理完了としました。

10. 外観金属部の磨きと仕上げ

組み直している際に、このプレーヤー、木製の筐体はかなり綺麗な状態なのに、光沢のある金属部が結構サビていて、見た目上宜しくないことが気になりました。冒頭にも書きましたが、レコードプレーヤーは視覚的にも楽しむ要素があるので、外観もかなり重要ですよね。ということで、ターンテーブル、針圧調整ウエイト、アームの共振減衰おもり(Dynamic Resonance Absorber)、カートリッジ取付ネジなど、外観に出ている金属部を徹底して磨いていきます。新品同様とまではいかないものの、結構綺麗になりましたよ!

ターンテーブル

いずれも
左:Before
右:After

針圧調整ウエイト

DRA(共振減衰おもり)

11. 各部調整

外した裏蓋を戻す前に各部を調整します。今回は依頼者さんからオートプレイで針が落ちる場所が若干外側で、針がレコードの盤面から落ちてしまうことがあるという話を聞いていたので、こちらを調整していきます。

針位置のインジケータを見ながら、調整ネジで落下位置を調整します

ここは元々調整できる様になっているので、2~3回程度、調整⇒動作確認を行えば、ベストの位置が分かってきます。でも何でこの機構は裏蓋を開けないと調整できないんだろう?オートリターン時の針位置は分解なしに調整できるのに・・・位置は絶対狂わないという設計?もしくは定期的にメンテに出してね!というメッセージ?

その後、針圧とアンチスケートも調整しましたが、このやり方自体はあまりにも一般的なので、ここでは割愛します。

12. 昭和家電の“ドミノ故障”と修理の醍醐味

今回の修理は、昭和家電であるあるの、”ドミノ故障” で結構連鎖的に不具合が出たので、少々時間が掛かりましたが、結果的に安定して使えるようになりました。元々整備済みで出品された方が、もう少し時間を掛けて動作確認を実施していれば、このような事態は防げたのではないかと考えます。電源を入れたままで、外観のサビ取りをする(時間を掛けて様子を見る)とか、色々手段はありますしね。

かくいう私も幾度となく修理品に再度不具合が発生して再修理、という経験しているので、出品者の方の気持ちも良~く分かるのですが。

でも次々に迫る難題を解決する、これこそ修理の醍醐味でもありますよね。(←大袈裟)

全交換部品と共に!LEDの色は普段点灯している部分を赤以外に変更しています

13. まとめ:PL-505は再び秋の夜長の相棒へ

時間はかかりましたが、昭和の名機、パイオニアのレコードプレーヤー、PL-505は無事に安定動作する様になりました。これで依頼者さんも、ゆっくり秋の夜長を楽しんで頂けるはずです。

良い感じです!

※この修理記録はあくまで個人の備忘録です。分解や修理はリスクもあるので、本内容を参考にされる場合は、あくまでも自己責任でお願いします。

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