お気に入りの機械式腕時計を常にベストな状態でキープしてくれるワインディングマシン。今回は「電源は入るのに回らない」という症状の個体をお預かりしました。外観は高級感たっぷりなのに中身は意外とシンプルで、原因はまさかの“あの部品”でした。分解のコツから代替パーツの工夫まで、今回の修理記録をまとめます。
Contents
- まずはいつもの様に状態確認から
- 分解ポイントの探索
- ギアボックス内部の故障原因
- プーリーゴムの代替パーツで復旧
- モード切換スイッチのガタ修正
- 動作確認と仕上げ
- 修理を終えて
1. まずはいつもの様に状態確認から
今回のワインディングマシンは、電源は入るのに回転しないという症状。IGM(株式会社五十君商店)という日本メーカー製の、M-22Fというモデル(製造は中国製)。外観は全面レザー調で内装はムートン風、フタは透明アクリル板でお気に入りの時計を“眺める楽しさ”もあるタイプです。電源を接続すると青色LEDが点灯し、かつモーター音はかすかに聞こえている、、、。この手の製品は初めて修理するので、事前にググって調べてみると、①回転駆動用プーリーゴム切れ、②DCモーター用のドライバ破損、③DCモーター自体の破損、などの故障が多そうです。今回の個体はモーターの音はするので①の駆動系のトラブルっぽいなと予想しました。


全面革張りで高級感のある製品です

電源は入りLEDも点灯します
2. 分解ポイントの探索
ただ、このマシン…外側にネジが一切見えない。高級感を出すために全面が合皮で覆われていて、底面も一枚革。底面は丁寧に触ってみたけどネジの頭や穴がある感触は一切ないし、内側のムートン生地もガッチリ両面テープで固定されていて、どこから攻めるか悩む構造です。無理に作業すると分解跡が残ってしまい、折角の高級感が台無しになってしまう。
そこで今回電源スイッチに注目。これは汎用品のはめ込み式だったのでとりあえず外してみると、あれ?前面パネルがグラグラする?何と内部の板が“はめ込みだけ”で固定されていることが判明。素材に厚みのあるムートン生地を利用しているのでこれを活かして、全面パネルをきゅっとはめ込んであるんですね。なのでネジも接着もなし。これは構造を理解していれば修理性が高くて◎ですが、逆に言えば誰でも分解できちゃう構造でもありますね。

電源スイッチを外すと指が入るのでカンタンに全面パネルが外れました
3. ギアボックス内部の故障原因
モーターへの供給電圧も確認し動いているのは確認できたので、ギアボックスを開けてみると…予想通りプーリーゴムが見事に切れていました。ネットで調べた「①プーリーゴム切れ ②モータードライバ故障 ③モーター故障」のうち、①がビンゴ。その他内部の減速ギア自体には破損もなく、またグリスの状態も良く特に問題はなさそう。

モーター電圧は正常

プーリーゴム、切れて脱落しとります
4. プーリーゴムの代替パーツで復旧
ただしこのプーリーゴム、直径2cmほどの小サイズ。手持ちのラジカセ修理用のゴムベルトではサイズが合わず困っていたところ、ふと「パイプ用のOリングがあったな」と思い出し試してみると、これがピッタリ。若干太いけどOリング自体はオイル併用で水密に対応するほどの耐久性もあるし、しばらくは問題なく使えそうです。

Oリング装着後。しっかりとモーターの回転力が伝わっています
5. モード切換スイッチのガタ修正
折角分解したので各部を総点検していると、モード切換スイッチがガタついているのを発見。操作するたびに力がかかる場所なので、ネジが少しずつ緩んでいったのでしょう。1サイズ大きいネジに交換してガタを解消しました。

ネジが緩んでキバンが浮いとります
6. 動作確認と仕上げ
あとは元通りに組み直して清掃。手元に機械式時計がなかったので、確認用に重めの時計をセットして動作を見てみると…おおっ、しっかり回る。しかも光の当たり具合で結構きれいでミラーボールっぽくなるんですね。初めて見ましたがワインディングマシンって、動いているだけでちょっとしたオブジェ感満載なんですね。お気に入りの腕時計を眺めながらじっくりと飲む、ワインやウイスキーは格別だと思います!

照明によりキラキラ光ってミラーボールっぽい
7. 修理を終えて
今回は分解方法の探索も含めて全作業時間は1時間弱ほど。構造はシンプルで、原因も明確。代替パーツの工夫で無事復旧できました。

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